「貸して」が言えなかった子どもを育てたのは、先生とお友達の力でした


子どもが中学生、小学生になった今でも、学力や理解のスピードに不安を感じることがあります。
振り返れば、その心配は保育園の頃からずっと続いていました。

家庭の中では通じることでも、集団生活の場では別の難しさがありますよね。
保育園には保育園のルールがあり、お友達と関わりながら遊ぶ力も求められます。
けれど、うちの子は当時、お友達が持っているおもちゃがどうしても気になってしまい、「貸して」と言えずに、いきなり手を伸ばして取ってしまうことがよくありました。

ひとつ取るだけならまだしも、相手が別のおもちゃに持ち替えると、今度はそちらも欲しくなってしまう。
「それはダメだよ」と止めても、欲しい気持ちが強く、手に入るまでなかなか離そうとしませんでした。
大きな声で泣いてくれれば、その場から抱きかかえて離れることもできます。
でも実際は、無言のまま強く握って離さないので、とっさに手を外させるしかなく、対応に苦労したのを覚えています。

もちろん、園でも家庭でも、同じことを何度も伝えてきました。
「借りたいときは“貸して”って言おうね」
「使ったら返そうね」
「順番を守ろうね」
そうした基本的な約束を、1回ではなく10回、20回と繰り返し言葉にしてきたのです。

ただ、成長のきっかけは、大人の声かけだけではありませんでした。
大きかったのは、まわりの園児たちの関わりです。
うちの子がおもちゃを取ろうとすると、近くにいた子が手をそっと押さえて、「貸してって言うんだよ」とやさしく教えてくれるようになりました。
また別の場面では、「順番だよ」と自然に声をかけてくれる子もいて、その積み重ねの中で、少しずつルールが本人の中に入っていったように感じます。

親としては、つい「どうしてできないのだろう」と本人だけに目が向いてしまいがちです。
けれど実際には、子どもは本人の力だけで育つわけではないのですね。
先生の見守りがあり、お友達の言葉があり、その環境全体の中で少しずつ社会のルールを学んでいくのだと実感しました。

今でも心配がゼロになったわけではありません。
それでも、あの頃のおもちゃの取り合いを思い出すと、周囲のサポートを受けながら、一歩ずつ成長してきたのだと感じます。
子どもの課題は、本人だけに背負わせるのではなく、まわりがどう支えられるかでも大きく変わるのかもしれません。

もし今、お子さんの集団生活や発達に不安を抱えているなら、「教えるのは大人だけではない」という視点が、少し気持ちを軽くしてくれるのではないでしょうか。


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